Tokyo Chutei Iki's Brand New Album "Great Baritonnia"
ロンドン・ジャズ・フェスティバル’06、’08、’14、サマーソニック’09、ノースシー・ジャズ・フェスティバル’10、’12、モントリオール国際ジャズ・フェスティバル’16にたて続けに出演、世界中のオーディエンスを驚喜させた東京中低域、6年ぶりとなるフルアルバム!
矢吹申彦氏描き下しのジャケットで2017年12月20日店頭発売決定。
ロンドン・ジャズ・フェスティバル’06、’08、’14、サマーソニック’09、ノースシー・ジャズ・フェスティバル’10、’12、モントリオール国際ジャズ・フェスティバル’16にたて続けに出演、世界中のオーディエンスを驚喜させた東京中低域、6年ぶりとなるフルアルバム!
矢吹申彦氏描き下しのジャケットで2017年12月20日店頭発売決定。
"Great Baritonnia/グレート・バリトニア"は"Great Britannia/グレート・ブリタニア"(大ブリテン島)をもじった造語で「大バリトン島」というふうな意味です。ご存知のように大バリトン島=東京中低域の住民は全員バリトンサックスを吹きます。人口は現在12人。言語は日本語とバリトンサックスの音。ひょっこりひょうたん島のように世界中を漂流しては、辿り着いた国々の人々と言葉の代わりにバリトンサックスの音を駆使して交流を深めてきました。ジャケットに描かれているのは最初に訪れた大英帝国の首都ロンドン。この時は一人一機の飛行船に乗っての訪問でした。アルバムを聴きながら、大きくて重たい楽器を首からさげたままの大バリトン島民の日常を眺めてみて下さい。島を周遊するのに1時間もかかりません。よろしければ2周でも3周でも。廻るたびに新しい発見があるに違いありません。
「糸井重里さんの『萬流コピー塾』の野球にまつわるお題の連載の中だったでしょうか「この世界はストライクゾーンとそれ以外で構成されている」というような意味の一文に目を啓かされ未だに忘れられず、また吉野朔実さんとの雑談の中でうかがった、とある漫画家さんの「いいかい、全ての人類は必ず誰かの孫なんだよ」という名言の話にも影響されているのだと思うのですが、「人類はもれなく大人と子供である」みたいなことを言ってみたワケです。異論はございましょうが。
さておき、曲のだいたいの部分が15拍子(12拍プラス3拍)に聞こえると思うのですが、その後半の3拍が「大人」に聞こえたり「子供」に聞こえたりもしましょう。英語のタイトルはロンドンの伊都子さんに相談して決めました。ネイティヴには「子供のまま大人になった人」みたいに理解されるのかな。それでも構わないと思っています。
「中間部のフリーは筒井洋一と鬼頭哲。最高のテイクのあとにまた最高のテイクを出したりするので、どこできりあげるかが難しいのですが、ソロ以外のメンバーの体力の限界も予想され、これだなというところで決めました。今後のライブでも“これ録音して欲しかった”というソロが飛び出すこともありましょう。どうか全てのライブもお見逃し無く、です」
「東京国際バリトンサックス・フェスティバル期間中にオンエアされるYOUTUBE番組『レディオ・グレート・バリトニア』のオープニングテーマとして録音。どこか辺境の小さな国の小さな放送局の深夜ラジオ番組なんかをイメージして書いたような記憶があります。が、他所の国の人が聴くとそれは東京っぽく聞こえているかもしれませんね。曲を貫く背骨のようなベースラインは鬼頭哲。スタカートのフレーズは山本昌人。メロディには町田長右衛門、松本卓也。アヘアヘと気のふれたようなフレーズは宇田川寅蔵。」
「DVD“サックス・オディティーズ”にはベルギーでのライブ・ヴァージョンが収録されていますが、今作ではスタジオ・ヴァージョンが初CD音源化。日本で最初にラーメンを食べたのは水戸光圀?みたいなお話で、日本(いや大バリトン島?)で最初にスキップした大名の驚きと喜びの図、的楽曲。農耕民族であるこの国の人々はすり足で歩くので、野山を駆け巡る狩猟民族のように跳躍のある3拍子の音楽が生まれなかったのだと、小泉文夫の本で読んだ覚えがあります。曲全体は4分の6拍子なのですが、大名のスキップ部分はハネてはいるけど4分の4拍子。鈴木広志が吹いています。軽やかなスキップの中にも大名の重厚な威厳が、感じられましょうか。(DVD“サックス・オディティーズ”にはブリュッセルとゲントでの演奏が収録されています)」
「今日は天気も良いし、さて仲間を誘って水浴びにでも行こうかと、大バリトン島の大バリトン人は思うわけですが、バリトンサックスをぶら下げたままだと服は脱ぎにくいし、楽器は濡れるし、意外と水は冷たいし、さあ大変だ。じゃあ楽器を下ろせばいいのに、その発想は、ない。悪戦苦闘しましたが、最終的には気持ちよかったです。DVD“キャンディ”では筒井洋一がハーグ〜スケベニンゲンをさまよいながら伝説の娼婦キャンディを探し求めるときのBGMとして使用されましたが、今作ではセリフもかぶらずフェイドアウトもなくフルサイズでCD音源化」
「曲のタイトルに限らず大事なことの英文が必要な時は、ロンドンでの活動をサポートしてくれているイツコ&アンディ・ウォーレンさんに監修を頂いています。で、これ「House Without Rest Roomだとトイレのない家ということになっちゃうかも」とご指摘頂いただいたのですが、曲が元々「困った事態」を描いたものでしたから、このタイトルのままにしました。核廃棄物の例えにも使われますよね。DVD"キャンディ"ではベルに突っ込んだ腕が抜けなくなってしまった不幸な男を上運天淳市が演じています。後奏フリーは町田長右衛門、山本昌人」
「ポール・マッカートニーの歴代の奥さんの名前が並んだタイトル。すなわち“マイ・ラブ、マイ・ラブ・アンド・マイ・ラブ”、すなわち“ラブ・ラブ・ラブ”です。…英国公演ではこの曲を演奏する前にこんなMCをします。若いオーディエンスはポカンとしてますが、年配の方々は苦笑いです。鬼頭くんは最初「カヴァーかと思った」くらいビートリーな曲ですが、本家に同じような曲があるかというとありません。ソロは上運天淳市、ベースラインは鬼頭哲と松本卓也。DVD"サックス・オディティーズ"にはブリュッセルでの演奏が収録されています」
「山中ヒデ之による多重録音。バリトン島に固有の言語があるとしたら、或いは方言が有るとしたら、こんなイントネーション。ブラジルという曲の前に収録されていますが、ブラジルの前奏曲というわけではありません。何かの“予感”“予言”、いや、“うわさ話”というような曲です。余談ですが、左の写真は2010年初めて訪れたブリュッセルでたまたま入ったブラジル料理のお店。ちょうどサッカー・ワールド・カップ開催中で店内のテレビでは試合中継が流れていました。私たちがブリュッセルに来る直前に、ロンドンの『バービカン・ブレイズ・フェスティバル』でカエターノ・ヴェローゾのアフター・アクトをつとめてきたことをお店に人に話したらとても喜んでくれました」
「かの名曲“Aquarela do Brasil”ではなく、東京中低域のオリジナル。ブラジルといえばサッカー、カーニバル、コーヒー、サンバ、などが真っ先に浮かびますが、この曲の雰囲気はそうした朗らかなブラジルではありません。夜のアマゾンを上流へ上流へと遡り、出会った土地の人々とカポエイラの組み手をしながら夜明けを迎える。そんなブラジル旅行。エンディングのフリーは鈴木広志、上運天淳市、こーせーです。DVD“サックス・オディティーズ”にはブリュッセルとゲントでの演奏が収録されています。松本卓也と鬼頭哲がポリリズムのフレーズで曲をリードしていきます」
「スキップ大名と同じく、この国で最初にバレエを踊った大名の物語。最初の音を1拍目だととらえてしまうとシャッフルのように感じますが、すぐに3/4拍子の曲だと気づくでしょう。アルペジオに続いて非常に控えめなソロを吹いているのは山本昌人です。(プリエ (plié) は、フランス語で腕や膝などを「曲げる、折る」ことを意味するplierという他動詞の過去分詞形が名詞化した言葉である。 バレエにおいては、両脚、または片脚を外旋(アン・ドゥオール)させた状況で膝を曲げていく動作、または曲げられた膝の状態を指す/wikiペディアより)」
「DVD“キャンディ”のオープニング・テーマをほんの少しリミックスして初CD音源化。“キャンディ”がどんなストーリーになるか決まっていない時点で書かれ録音されていたのに、不穏なサスペンス・タッチの5拍子。新しい曲に着手するとき、タイトルが決まっていることは稀で、たいていの場合、譜面には日付だけが書かれています。キャンディというDVDのタイトルはドラマ部分を撮影している時に宇田川寅蔵の口から飛び出したアドリブの台詞からつけました。したがってこの曲にはオリジナルな名前が無いまま、「バカボンのパパ」のように、ずっとあだ名で呼び続けられているようなところがあります」
「これもDVD“キャンディ”収録の音源をほんの少しやわらかくリミックス。東京中低域ファンを公言して下さっていた漫画家の吉野朔実さん(故人)一番のお気に入りのこの曲。追加制作された“キャンディ”のインナー・スリーブにはメンバーひとりひとりの似顔絵アイコンも書き下ろして下さいました。誰がどのパートを吹いているかはDVDをご覧下さいね」
「東京国際バリトンサックス・フェスティバルの情報を伝えるインターネット番組“Radio Great Baritonnia ”のエンディング・テーマとして作りました。これで大バリトン島周遊の旅も終わり、さて、Depature。海路で去るのか空路で去るのか、どんどん遠ざかって小さくなって…島一面に咲き誇っているあれは何の花なのでしょうね。番組のエンディングで使っていたときは『おやすみなさい』でしたが、このアルバムのエンディングでは『ボンボヤージ』かしら『お疲れさま』かしら。島民一同、またのご来島をお待ちしております。控えめなフリーは山本昌人」
Great Baritonnia / Tokyo Chutei Iki
Performed by Tokyo Chutei Iki
Composed and arranged Akira Mizutani
Mixed and Mastered by Shinchi Akagawa
Cover art : Nobuhiko Yabuki
Tokyo Chutei Iki is formed with twelve baritone saxophone players.
They use only human voice and baritone saxophones.
TOKYO CHUTEI IKI 東京中低域:
MIZUTANI AKIRA/水谷紹 [BARITONE-SAXOPHONE,Vocal]
KITO AKIRA/鬼頭哲 [BARITONE-SAXOPHONE]
SUZUKI HIROSHI/鈴木広志 [BARITONE-SAXOPHONE]
HIGASHI RYOTA/東涼太 [BARITONE-SAXOPHONE]
TSUTSUI YOICHI/筒井洋一 [BARITONE-SAXOPHONE]
UDAGAWA TORAZO/宇田川寅蔵 [BARITONE-SAXOPHONE]
YAMAMOTO MASATO/山本昌人 [BARITONE-SAXOPHONE]
CHOEMON MACHIDA/町田長右衛門 [BARITONE-SAXOPHONE]
JUNICHI KAMIUNTEN/上運天淳市 [BARITONE-SAXOPHONE]
TAKUYA MATSUMOTO/松本卓也 [BARITONE-SAXOPHONE]
HIDEYUKI YAMANAKA/山中ヒデ之 [BARITONE-SAXOPHONE]
KOSE/こーせー [BARITONE-SAXOPHONE]
EQCD-0010
P&C 2017 SUPER HYPE MUSIC and HINTS MUSIC PUBLISHING CO., LTD
Unauthorized copying, hiring, lending, public performance and broadcasting of the record prohibited.
『Great Baritonnia』完成記念・対談「ここんところの東京中低域」
[水谷紹、鬼頭哲、筒井洋一、山中ヒデ之]
水谷「『グレート・バリトニア』は今のメンバーになってから初めてのアルバムです」
鬼頭「初めてなのは、こーせー、そしてヒデ之、あれ、松本くんも入ってなかったかな?ラスト・バリトニクは。今回はキャンディー辺りからの未CD化音源になるわけですね」
ヒデ之「この5年間くらいの新作などをまとめたということですね」
水谷「ヒデ之くんは加入後、初のアルバムリリースだけど、東京中低域に入ってみてどう?」
ヒデ之「今、日本、東京でバリトンサックスを吹く意味って何だろう?ってボク考えたんです。ジャズをやるばかりじゃ、ちょっと退屈なんですね。ボクもジャズから入って来たのですが“面白いことやってる”っていつも思いながらやりたくなったんですよね。そう思ってたボクが東京中低域と出会えたのはラッキーだったと」
鬼頭「ピュアーだね。そういう照れくさいようなこと言葉にするの…好きだよ。だったらさ、喜んでるだけじゃなくってもっとバシバシ吹いてちょうだいよ。でも、ジャンルとかカテゴリーとかあんまり考えなくったっていいよ」
ヒデ之「はい」
水谷「ボクも2005年くらいまで…もう少し後までかな、ジャズと交わることを抗っていたんだけど、実は。でも、海外のジャズフェスに沢山出てるうちに、それはなくなったかな。表現する方があんまり意識してジャンル付きの表札を出す必要もないしね」
鬼頭「東京には…ま、どこの国でもそうでしょうけど、ヘビメタのように様式美としてのジャズをやる人々はいる。それはスキップしてもいいんじゃないかな、東京中低域のようなバンドは」
水谷「レッド・ツェッペリンやYMOが出て来た時に、オーディエンスは予備知識なく初体験の音を聴いたのに“これ、これ、この音が聴きたかったんだ”って飛びついたワケでしょ。あ、それは勿論マイルスやセロニアス・モンクとかでも同じだと思うんですけど。だからボクらもそうありたいという、それだけのことだよね」
鬼頭「東京のすんごいバリトンサックス吹きが集まってオリジナルの音楽を作っている、それがもうジャンルっちゃジャンルですもんね」
ヒデ之「ほんとですね」
水谷「東京中低域があって良かったねえ、ヒデ之くん」
鬼頭「ぼくだってぼくのようなバリトン吹きの受け皿があって良かったっていう風には思ってますよ。東京中低域だけじゃなくって参加しているいろんなセッションにも感じてますが」
ヒデ之「バリトン吹きのニュータイプだと思います、鬼頭さんも東京中低域も」
水谷「今日の本番の『大人子供』面白かったよね」
鬼頭「だんだん、どういうことすれば筒井さんがたくさん“出して”くれるかが見えて来たような。“間”と“吸う”感じ。あとタイトルの『大人子供』っていうのが持ってる感じ。それを“どうなのよ、どうなのよ”ってボクは尋問してるのかな」
筒井「『大人子供』…大人であって子供であって…つまり、絶頂に達せずにいつまでも続けられたらいいってことかなって解釈しています」
水谷「イミシンな表現ですね」
筒井「例えばタンゴってそういう音楽なんですよ」
水谷「アルゼンチンですか」
筒井「そういう感じを出したいんですよね、出したいんだけど出さないっていう」
鬼頭「何を言ってんすか」
ヒデ之「出ちゃってますよ、筒井さん、いつも」
鬼頭「インプロもそれぞれあって、例えば上運天くんは非常に安定していて“今日も当然面白いんだろうな”って思ってお客さんは聴いている。それは本人には常にプレッシャーだろうけど。そこにオーディエンスとの予定調和が生じるとつまらなくなる」
水谷「3秒後のこと、或いは0.5秒後のことを考えながら吹く構築系の即興の人もいるような気がするんですよね。ぼくはサックスで即興演奏なんて出来ないんだけど、もし出来たとしたらそのタイプだと思う」
鬼頭「東くんは行き当たりバッタリで吹くことがあっても、お終いに持って行くことをキチンとするよね」
水谷「意識と無意識が、無意識に行き来している、ってことだろーか。魂が幽体離脱して抜け殻となった肉体の方が音楽表現をやってる感じかな。インプロしている人の脳の中を覗いて見たいね」
photo : Manami Maeda
鬼頭「東京中低域に限ったことではないけど、同じ楽器で演奏してると、やっぱりどうしても各人の力量の差というか違いが出て来るじゃないですか。その差異を、水谷さん、わりと放置してますよね」
水谷「ボクたちフィルハーモニー・オーケストラじゃないから、正確にきちんと演奏することが求められてるワケでもないんだけど、例えば遥々モントリオールまで演奏しに行って“オマエ、そりゃないだろう”って音出しちゃうヤツがいたりすると、しっかりしてくれよおって思うけれどね、流石にぼくも。でも、それがバンドにとって最重要なことはそこではない気がしててね」
鬼頭「バンドだからグチャッとしちゃう瞬間の面白さもある。あとでミスしたヤツを肴に酒を飲む楽しみもありますからね」
水谷「ザッツ・バンドマン・ライフ。ボク自身、演奏家としてうまくいかなかったヒトなので、練習すれば際限なく上手くなれるってワケじゃないことも判ってるんだ。だけど、指が早く動かなくっても素晴らしいプレイヤーになりうることがあるってのも見て来たんだ。そうなるには、ひたすら音楽に打ち込むことなんだよね、ずっと音楽のことを思ってるっていうかさ、結局」
[東京・下北沢・2017.8.23]
東京中低域 Brand new Album『Great Baritonnia』